聖徳太子の本拠地、斑鳩町。世界最古の木造建築として有名なのが法隆寺五重塔だ。こちらは、いつ行っても観光客でいっぱい。その近くの法起寺に、少し遅れて建ったこちらも最古の三重塔があるのだけれど、意外に訪れる人は少ない。でも、これが案外いい感じなのである。
創建は706年というから、いま話題の平城京(遷都1300年)よりさらに4年古い。現代はどうしてもコンクリートの建物や電柱、電線なんぞにじゃまされがちなのだが、法起寺の周辺は、あまりそういう近代的なものが視界に入ってこない。今回は春のれんげ畑から塔をのぞんでいるけれど、秋のススキや稲穂もいいかんじで写真がとれる。
何より、境内に入ってみて驚いた。塔の南側に「南大門」があって、もうすぐ外側に田んぼや畑が広がっている。ひょい、と境内に入れてしまうくらい。ちょっとした囲いはあるのだけれど。そのへんのおおらかさというか、オープンさがさらにこのお寺をひなびた雰囲気にさせている。
おもしろかったのが、文献に残っている「露盤銘」のナゾだった。露盤というのは、塔の先端にのっかっている相輪の一番下にある箱のようなもの。そこに寺の由緒やらが書いてあった…と鎌倉時代の文献「聖徳太子伝私記」に書かれているのだが、現物の露盤は鋳つぶされて残っておらず、その伝が信じられるのかどうか、ずいぶん論議がアッタそうだ。結局、発掘調査の結果などと照らし合わせ、近年では信憑性が高いとされるようになっている。
斑鳩町に来たなら、法隆寺を見て(広いのでけっこう疲れてしまうけれど)、せっかくだからぜひ法起寺に。さらにもう少し足を伸ばして、法輪寺の三重塔まで行ってもらえるといい。こちらも法隆寺と同じくらい時代をさかのぼる三重塔があったのだが、昭和19年に落雷で焼けてしまった。その後、最後の宮大工棟梁と呼ばれた西岡常一氏ラによってみごとによみがえり、美しい姿をみせてくれている(作家、幸田文さんがたいへん尽力されたことでも有名)。これで斑鳩三塔を制覇ということに。平城京や飛鳥もいいけれど、斑鳩には、ここにしかない鄙(ひな)の風景があります。
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